サトサーガ外伝
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落日の雲の彼方に

これは三章の番外編である。

『お願いです、、この子だけは、、。』
レビン王国城下街の外れで、夫婦らしき者が倒れていた。
夫のほうは既に息絶えていた。。
沈みかけた陽が
流れる血を更に染める。

アスガルド歴1660年、蠍の月の、
それは
ありきたりな出来事であった。
『野獣の仕業か?野獣にやられたんだな。。しっかりしろ!!』
街の者たちが集まる中
一人の青年が
介抱した。
その男の名は
マーキー。
レビン国王子。
そして彼の右足に
まだ少年であるがフケ顔の男の子が、しがみつく。
少年の名はミーツ。
『あぁ、、マーキー、、様。。この子を、コットンを。。』
そう言うと、母親は布に包まれた少女をマーキーに託した。。
『おい!しっかりするんだ!』
しかし、マーキーの呼び掛けに、その女性が応えることは、もう、なかった。
その光景を見つめる、フケ顔の男の子が
更にマーキーの脚の影にかくれた。。。


『駄目だよ!ミーツ君っ、ちゃんと食べてくれなきゃ!!』
『は?で、でも、これって泥で作った御飯。。』
幼い少年と少女が
町外れでママゴトをしている。
少年の名はミーツ
少女の名はコットン
あの日から
数年の月日がながれていた。
春の日差しが
つつましやかに二人に注ぐ。
しかし
少年ミーツの記憶には
コットンの両親の在りし日の姿が
未だ存在していた。
血と夕日の赤。
コットンは
ひとりぼっちなのだ。
ともだち?
いもうと?
こいびと?まさか。

どうしたって
コットンは
ひとりぼっち。

だが、その事で
ミーツ少年の瞳に涙がうかぶ事は
今までなかった。
可哀相に
と、ミーツは思う
けど、泣けない
泣いたらいけない
自分が守る。
守る
という言葉の意味
それがまだ少年であるミーツには曖昧であった
だけど守る
兄として
親代わりとして
恋人として。まさか。


コットンが物心ついた時から
少年ミーツの姿はあった。

どうして私には
両親がいないの?
このフケ顔の少年は誰?
ともだち?
おにいちゃん?
こいびと?こいびとって何?
私は、一人ぼっち?

だが、その事で
コットンの瞳に涙が浮かぶことは今までなかった。

泣いてもしょうがないもん。
私は、ほんとにひとりぼっち?
うぅん、
マーキーさんがいる。
ミーツの両親がいる
ミーツがいる。


『文句言わないで食べてよ!!』
『でも。。』
泥でこねた料理を
無理矢理ミーツに食べさせようとするコットン。

『ミーツはお父さん役でしょ!お父さんはお母さんのつくる料理に文句いわないものなの!!』
『・・・』
ミーツは絶句している。
『……ミーツは、ホントの父さん母さんがいるから、いいじゃない。。』
そう言うと
コットンの瞳が除々に涙目になる。
『……私なんて…ぐすっ…お父さんもお母さんの顔も…ぐすっ』
『……コットン……』
ミーツがいつものように困りだす。。
『うわぁぁぁーん』
とうとうコットンが泣きだした。
『わかった。。食べるよ。。はむはむ。。』
ミーツは観念して泥の御飯を無理矢理口にいれる。
『ぐしゅっ、ちゃんと、、噛んで、、飲み込んで。。ぐすん。。』
コットンの追い打ちの一言
『ひふ!( ̄□ ̄;)ひぁかりひゃひぁ。。』
(ぎく!( ̄□ ̄;)わかりましたぁ。。)
ジャリジャリゴリゴリ
ごくん。。
効果音が響く。
[おぇ〜、きもちわるぅい]
ミーツはそう心で呟いた。
口に含むだけで満足してくれると信じた自分が浅はかだった。
そうミーツは後悔している。
なんでも食べるミーツ少年。
泥は始めて食べた模様。。

少年は
未だ少女の性格を理解していない。

『えへっクスクス』
コットンは急に微笑んだ。
『あΣ(・Д・)コットン!嘘泣きしたな!!………う、、おおえぇぇ〜』
激しい腹痛がミーツを襲う。
フケ顔が更に歪む。
『御飯がすんだら狩りの仕事に行ってきてください!』
少女は少年の苦しむ姿などお構いなしである

『ミーツ!コットンちゃん!御飯よー!!』
遠くの家からミーツの母の声がした。
『はーい!』
元気にお返事のコットン
『ぐぼぉぇぇ』
コットンは
苦しむミーツを見捨て
てくてく歩いて
家の中へとかけ込んだ。
『おぉええ〜、ぐぼぉえぇ〜』
独りその場に残されたミーツの
嘔吐の叫び声が
王都に響いて続いていた。


『ごめん、、ごめんね、ミーツ、、ごめん。。』
頭に氷嚢を置き、寝込むミーツのベッドに
上半身を委ね、コットンが泣いていた。
部屋に夕日が入り込み
コットンを赤く染める。
まるで
あの時のように。
『コットン、心配しないで、大丈夫。。』
ミーツがそっと声をかける。
『そうよコットンちゃん、そんなに泣かなくていいのよ』
ミーツの母がそっとコットンを抱きしめた。
しかし
コットンには負い目がある。

ミーツのおばちゃん
私は、あなたの子供じゃないの
私は引き取られて育った子
普通は怒るよね
自分の本当の子供が
他人の子供に病気にさせられたら。。

歳が経つにつれ

次第に自分の生い立ちを知っていった
コットン。
辛かったよ、悲しかったよ
そんな事を考えていた

『心配ない、大丈夫』
ミーツの母が
優しく慰める。

ごめんなさい
おばちゃん
ミーツ
そして、
天国のとうさん、かあさん
コットンは
悪い子です。
ごめんなさい
そんな事も考えていた

『…さてと、お母さんは、御飯の用意をしてきますからね。』
そう言うと
ミーツの母親はそっとコットンから離れ
階下へと降りた。

『ぐすっ。。』

その、お母さん、と言う言葉は
自分に向けられたのか
ミーツに向けられたのか
コットンには
わからないでいた。
けど、信じていたい
と、コットンは思う


『大丈夫さ、このくらい。。』
ミーツはコットンに微笑む。
『ぐしゅっ、でも。。』
コットンは泣きじゃくる。
『・・・』
ミーツは静かに目を閉じる
『ミーツ。。ぐすっ』
コットンは涙目で見つめる。
『なんだい?コットン。。』
ミーツがそれを察知する。
『あのね。。』
目を閉じたままのミーツに
コットンは話しかける。
『?』
『……コットンね。。』
『・・・?』
『……おおきくなったら、ミーツの、お嫁さんになるの。。だからね、、怒らないでね。。』

ともだち?
いもうと?
こいびと?まさか。

どうしたって
コットンはひとりぼっち

続く涙声のコットンに
ミーツは
目を閉じたまま
微笑んだ
『…ありがとう…』
『…怒ってない?…』
コットンの顔に、明るさが戻ってきた。
『うん。』
そう応えたミーツ
その瞬間、目を開け、コットンを見つめて
最高の笑顔をみせる。
『怒ってないよ』
『ほんとにほんと?』
コットンは泣くのをやめ
ミーツの顔を覗き込んだ。
『そうさ、ほんとさ』
『よかったぁ〜』
コットンから安堵の息が洩れた。
『ミーツ、死んだらどうしようって思った。。』
『(-.-;)勝手に殺すなよ。。』
『だって、ミーツ死んじゃったら、コットン、ホントに独りになっちゃうよ。。』
『……コットン。。』

ミーツの顔が一瞬曇る。
思い出したくない
夕日が
余計な記憶を呼び起こす。
早く日が沈んでほしい
ミーツは願った。。

『あ!そうだ』
コットンは
走りだしていた
部屋の入口に向かって。
そして言う
『月光草とってくるね!』
月光草
この地に伝わる万能薬である。
ある洞窟の奥地にしか存在しない。

『独りは危険だよ!コット〜ン!!』
『だいじょ〜ぶ☆』
ミーツの制止を振り切るコットンの言葉は
もう既に階下からだった。
それから
長い刻が経った。
外はもう夜になっていた。
ミーツを浅い眠りから呼び覚ましたのは
外から聞こえてくる声だった。
外が騒がしい。
『っ、コットン?コットンっ!!』
窓から外を眺めたミーツの瞳には
ぐったりとしているコットンと
それをとりまく街人達の姿がうつった。。
瞬間
ミーツは
部屋を飛び出し
階段を駆け降り
外へ飛び出した。
続くミーツが
駆け寄って見たそれは
痣だらけの
コットンと
そのコットンを口にくわえて
倒れ込んでいる
血まみれの子供の聖霊獣だった。。

聖霊獣
この地に生息する
ペガサスや
ドラゴンの事を指す。
一般的に
人間に対し友好的である。

『僕のために。。』
ミーツは
聖霊獣とコットンに
覆いかぶさった。。


『野獣に襲われたんだ。。無茶だよ、洞窟までは大人の足でも遠い。。』
そう言ったのは
マーキー王子だった。
『王子。。』
涙目でマーキーを見つめるミーツ。
マーキーは首を縦に振った。
『安心するんだ、コットンちゃんは、気を失っているだけだから。危なかったところを、その聖霊獣のユニコーンが命がけで助けてくれたのさ。』
『・・・』
ミーツは、ユニコーンに目を向ける。
自分が守る。
そう思っていたはずなのに。
そう自分に言い聞かせていたはずなのに。

何故?
思い出したくないのに。
夕日は沈んでいるのに。
あの時とは違うのに。
あの記憶が蘇る。
と、同時に
自分には何の力もないことを
自覚するミーツだった。

『ありがとう、コットンを運んでくれたんだね。。』
ミーツは呟く。。

『さぁ、はやく手当してやらないとな。』
マーキーが独りと一匹を
抱き上げた。
更けゆく夜の闇
まるで何もなかったかのように
人々は家庭の団欒にもどる。
この国では
このような事
いたって珍しい事ではないのだ。。

そして
ひとつのベッドで
二人と一匹は寝ていた。

『びっくりしたんだぁ』
コットンが呟いた。
『コットン、無理しすぎだよ。。』
『街を出たらすぐ、ぶわぁって、野獣さんが。。こわかったんだぁ。。』
『ぶみゃ〜』
ユニコーンも
そのコットンの声に目を覚ます。
『あ、ユニコーンさんも起きた!おはよって言ってる!!』
ミーツは、そのコットンの気持ちの切り替えに感心していた。
実の両親のように
殺されていたかもしれないのに。。
[いや、コットンは本当は天国のとうさん、かあさんの元へ行ったほうがよかったのかな]
自分では何も出来なかったミーツは考える。
[ちがう、それは間違ってる。僕が強くなればいい。マーキーさんのように。それだけの事じゃないか]

続くともだち?違うさ。
いもうと?それも違う。
こいびと?

僕には、まだわからないけれど
きっとそうさ
どうしたって
もう
コットンは
一人ぼっちなんかじゃない。

『まさかぁ』
ミーツは微笑む
『ホントだもん、コットンはユニコーンさんの言葉わかるんだもん』
『はいはい』
ミーツの味気ない返事
『いいもん、ねー、ユニコーンさんっ♪』
コットンはユニコーンに語りかける
『みゅみゅ〜』
『ほら☆』
『なんだよ』
『ミーツにはわからないでしょ?』
『(ーー;)いいもん、わからなくても。』
『ミーツって意地っ張りだよね。』
『みゅみゅ〜』
ユニコーンも
それに賛同している
そんな様子だった。


『なぁ?。』 自分の大切な人
幼心に想う女の子の命を救ったユニコーンを
ミーツも愛しく思う。
否、嫉妬なのかもしれない。
だから、僕のことも構ってよ。
そんな声で語る。

『何よ?』
『僕にも喋らせてよ』
コットンの冷たい返事に、更に返したミーツの言葉は
本音だったのかもしれない。
『ユニコーンさん、ミーツの言葉なんてわかるかな?』
コットンは意地悪に返すが、
ミーツは話しかける
『ねぇユニコーンさん。。』
『…』
『コットンを助けてくれてありがとう』
『みゅーみゅー』
『あ、わかってくれた!』
ミーツは嬉しそうだ
『ぐ、(-_-;)偶然よ。。』
何か自分の大切な物が奪われたような気がしてコットンは悔しさを表す。
『コットン、意地悪なんだからぁ。。』
昼間のママゴト
先程の事件
この少女と
これから先も一緒にやっていけるのか
命がいくつあっても足りない。
不安になるミーツだった。
その思いが、彼を騎士団長にまでさせたのは、その数年後の話である。

そして、夜は更に深まり
やがて朝が来るまで
二人と一匹は体を休めた。
次の日はもう
桜が満開だった

〜おわり〜
(^-^)
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